| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-114

中山間地の耕作放棄棚田における林床植生の特徴と土壌水分・光環境との関係

*石塚俊也,中田誠(新潟大・自),金子洋平(新潟大・超研),本間航介(新潟大・農)

新潟県佐渡島の中山間地にある耕作放棄後約40年が経過した棚田地帯において、林床植生と土壌水分、光環境との関係を調査した。本調査では、ヨシ群落や低木林からなるA区(20m×80m)に0.5m×5mのコドラートを33個、コナラやクリを主とした高木林からなるB区(20m×100m)に同様のコドラートを24個設置し、林床植生を調べた。

本調査地の植生分布には土壌水分が最も重要であり、木本植物、つる植物は含水率が高くなると種数が有意に減少した。草本植物はA区では含水率が高い場所でも種数は減少しなかったが、B区では減少傾向が見られた。含水率に影響を及ぼす要因は斜面位置のほか、棚田面、畦、法面といった棚田の微地形が強く関わっていた。法面は傾斜があるため水はけが良く、畦は棚田面より高い位置にあるために地下水位の影響を緩和できる。棚田は微地形の違いが土壌水分に影響し、狭小な範囲に複雑な水分環境を形成していた。A区では含水率の上昇に伴ってH’多様度が緩やかに低下したのに対し、B区では含水率が50%を超えると急激にH’多様度が低下し、含水率の高い場所でH’多様度の違いが顕著に現れた。それぞれの種の出現頻度に対して、含水率と光環境(SOC)が共に正の相関を示した種はA区で11種、B区では0種だった。一般に湿生植物は陽生ものが多い。A区では過湿条件下でも光環境が良好なため湿生植物が生育可能で、B区では林床が暗く、湿生植物の生育を制限したためH’多様度が低下したと考えられる。

本調査地では土壌水分や光に関して、多様な環境条件がモザイク状に配列されており、これにより高い植物種多様性が維持されていることが示唆された。


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