| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-136
森林の林床には地表徘徊性昆虫からなる群集が形成され、食物連鎖上の同一の栄養段階に属し、共通の資源をめぐる競争関係にある種が多い。冷温帯のスギ人工林の林床に生息する地表徘徊性昆虫の種組成を明らかにするため、2009年7月下旬と8月下旬の各10日間、長野県白馬村神城地区にある4ヶ所のスギ人工林の林床でピットフォール・トラップ調査を行なった。トラップは縦横12個ずつ合計144個を2m間隔でしかけ、設置から24時間後にトラップを巡回し、捕獲した昆虫を同定するとともに雌雄を判別し、体長と前胸背板幅を測定し、標識を施した後に放逐した。各月でそれぞれ4回の再捕獲を行ない、7月はのべ11種1018個体(10日間)を捕獲したが、8月はそのうちの9種1532個体(10日間)が出現した。そのうち大型の種はマルバネオサムシとクロナガオサムシ、マイマイカブリ、アキタクロナガオサムシの4種で、ゴミムシ類はPterostichus属・Synuchus属に含まれる種であった。このうちオオキンナガゴミムシは7月と8月の両方で捕獲されたが、最捕獲はされなかった。日当たり再捕獲率は、オサムシ類は約0%〜10%となりゴミムシ類では約0%〜15%だった。スギ林の下層植生の現存量と日あたり再捕獲率に負の相関をもつ種(3種)と正の相関をもつ種(2種)のあることがわかった。クロツヤヒラタゴミムシとオオクロツヤヒラタゴミムシは、調査地間で密度の差が小さく、ニセクロナガゴミムシとクロナガオサムシ、マルバネオサムシは密度に大きな違いが生じていた。クロツヤヒラタゴミムシとニセクロナガゴミムシ、マルバネオサムシとクロナガオサムシの間には、出現個体数に負の相関の傾向がみられ、排他的な生活をしていた可能性がある。これらの結果より、冷温帯スギ林に生息する地表徘徊性昆虫の種間の相互作用について考察する。