| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-142
水田の水生昆虫群集に影響する要因を明らかにするために、滋賀県琵琶湖周辺の高島市マキノ町、大津市仰木、大津市田上、多賀町、彦根市の5地域23筆の水田(慣行農法4、減農薬農法10、無農薬農法9筆)で、中干しから落水までの期間に野外調査を行った。調査は0.2×1mの掬い取り2回を1セットとして、これを各水田で原則として20回繰り返す方法で行った。
結果、23水田で合計9綱、120分類群、26544個体の水生動物(脊椎・無脊椎を含む)が確認された。そのうち水生昆虫は8目88分類群16566個体であった。調査地全体での水生昆虫の優占5分類群はユスリカ科、フタバカゲロウ属、コミズムシ属、チビゲンゴロウ、シオカラトンボであった。水生昆虫の総分類群数、個体数、多様度指数を異なる農法の水田間で比較した結果、無農薬×減農薬×慣行、無農薬×減農薬・慣行、無農薬・減農薬×慣行のいずれの組み合わせでも有意差は見られなかった。
水生昆虫の種構成を基にTwinspanにより調査水田の分類を行った結果、同様の農法を取る水田がグループ化されるのではなく、概ね湖北、湖南、湖東それぞれの地域の水田が同一グループにまとまる傾向が認められた。そこで、水生昆虫分類群数、個体数を3地域間で比較した結果、多様度には地域間での差は見られなかったものの、水生昆虫の総分類群数は湖東が湖北に比べ有意に少なかった。また、確認された分類群数の多かったトンボ目、カメムシ目、コウチュウ目、ハエ目の4目で比較すると、分類群数はハエ目を除く3目で3地域間に有意差が認められた。これらのことより、本研究を行った地域では、水田中干し後の水生昆虫の群集構造は水田の農法ではなく、その地域に生息する水生昆虫相を反映していると考えられた。