| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-143

河床礫の岩種と表面粗さに着目した水生昆虫の生息場環境

*矢島良紀,小林草平,赤松史一,三輪準二(土木研)

我が国の地質構造は複雑であるため、多くの河川は複数の地質体を集水域とし、各地質体より供給される土砂を下流へ運搬している。そのため河川の下流には多様な岩質の礫が存在していることが多い。

河床に存在する砂や礫は水生生物の生息場として重要であることはよく知られており、上流に設置されたダム等により土砂の移動がなくなると、ダム下流で河床のアーマ化が生じることにより水生生態系に悪影響を与えることが指摘されている。そのため一部のダムにおいては、置き土をするなど人工的な土砂供給をおこなっているが、そこで供給される土砂(礫)の性状に関しては、粒径に関しては一定の配慮がなされているものの、礫の表面粗さを規定する岩質についての考慮は不十分なことが多く、そもそも岩質の違いが水生昆虫に与える影響についてもあまり議論がなされていないのが現状である。

著者らは、河床礫の岩種と表面の粗さの違いによって生息する水生昆虫の構成に変化が生じると推測し、これを解明するために、2009年5月に、流域に多様な地質を有する河川である愛知県の豊川の下流2地点において、瀬の環境にある河床礫と各礫に生息している水生昆虫の調査を実施した。礫のサンプリング数は33個である。河床礫は大きさを測定し、岩種を判定した上で、表面粗さをレーザー変位計測定によって定量化した。水生昆虫は同定をおこなった上で、個体毎の重量を測定し、河床礫毎の水生昆虫バイオマスを求めた。これらの分析結果を用いて両者の関係について検討をおこなった。

その結果、大きな礫ほど水生昆虫の種類やバイオマスが高いという一般的な傾向に加え、種類毎、体サイズ毎に、大きな礫に多い・小さな礫に多い・礫の大きさとは無関係、粗い礫に多い・滑らかな礫に多い・礫の粗さとは無関係、といった礫と水生昆虫の関係についていくつかの特徴を見いだすことができた。


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