| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-148

西表島に生息する小型ゲンゴロウ類 −各種の湿地環境別における生息状況−

*唐真盛人(東海大院・人間環境),水谷晃,崎原健(東海大・沖セ),北野忠(東海大・教養),河野裕美(東海大・沖セ)

演者らは2007年3月より、八重山諸島西表島におけるゲンゴロウ類の生息環境および人間活動との関わりを明らかにすることを目的とし、各種の生息状況を調べている。今回は、水田・水田や耕作地に付随する溜め池・牧場内の水溜まり・山間部の池や染み出し水・ポットホールなど計26地点でゲンゴロウ類を採集し、湿地環境別における種組成をまとめたので報告する。(以下、種名の”ゲンゴロウ”を省略)

これまで西表島では、南西諸島の各島の中でも最多の40種のゲンゴロウ類が確認されている。本調査において、既知のうち7種は未確認であったが、西表島初記録となるアマミマルケシ、ナガチビ、チャイロチビ、チビコツブゲンゴロウ属の一種を含めた計37種が確認された。このうち、中・大型種を除く6mm以下の計29種について紹介すると、一年中水が張っている水田およびその周辺の湿地においては9〜18種と多く確認された。一方で、非耕作期に水を抜く水田、農業用溜め池や砂防池などでは1〜8種と少なかった。また、山間部の池や染み出し水など、自然的な湿地においても1〜4種と少なかった。しかし、これらの自然水域では、ウエノチビケシ、リュウキュウセスジ、ヤエヤマセスジ、チビセスジ、アトホシヒラタマメ、チビコツブゲンゴロウ属の一種のように人工的湿地では確認されない種がみられた。

これらより、多くのゲンゴロウ類の生息環境は、主に農耕による人間活動によって維持されていることが明らかとなった。また、農法の違いや、異なる人工的湿地ごとで生息可能な種が異なることが示唆された。一方で、生息する種類数は少ないものの、自然水域のみに出現する種もみられることから、西表島においてゲンゴロウ類が豊富な要因として、「農耕による湿地環境の維持」と「亜熱帯の原生林が存在していること」が考えられた。


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