| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-149

西表島近世網取集落跡におけるオカヤドカリ類の宿貝利用と分布特性

*丹尾岳斗(東海大・水産),小菅丈治(国際マングローブ生態系協会),河野裕美(東海大・沖セ)

オカヤドカリ類は,幼生期をゾエア幼生として約1カ月海中で過ごし,陸上生活に移行する.その後は,成長に伴い大きな宿貝へと交換していかなければならず,様々なサイズの貝殻群が必要である.本研究の調査地である西表島網取集落跡地は,17世紀初頭から1971年に廃村となるまで約350年間続いた海岸集落の一つであった.この間は水稲栽培を行いながら狩猟・漁労採集生活が営まれ,廃村後約40年経過した現在も集落跡地内にはその痕跡が残る.そこで,ここに生息しているオカヤドカリ類の分布と宿貝特性から人との関係を明らかにすることを目的とした.調査は,2009年4月25日〜11月7日まで集落跡地と周辺海岸でオカヤドカリ類の分布と宿貝,及び集落内に散在する貝殻組成の調査を行った.出現したオカヤドカリ類(n=1739)は,オオナキオカヤドカリ67.0%,ナキオカヤドカリ29.7%,オカヤドカリ3.3%の3種であり,各々は,主に集落内,海岸,後背山裾に分布した.大型のオオナキオカヤドカリの宿貝(19科56種)は,他の小型オカヤドカリ2種の宿貝(11科39種)と異なり,チョウセンサザエ31.3%,サラサバテイ11.0%を利用していた.これらの貝類は,主にサンゴ礁原に生息し,海岸に打ち上がることは稀である.旧住民への聞き取り調査では,この2種も主要な食用貝類に含まれ,集落内に投棄していたという証言が得られた.集落内の貝殻調査では39科73種(n=1541)が確認され,実際にこの2種も含まれていた.つまり,網取集落ではかつてオオナキオカヤドカリの宿貝となる豊富な貝殻群の供給があった.このことから,集落内のオオナキオカヤドカリは安定して宿貝を得て,大きな個体群を形成することが可能であったと示唆された.


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