| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-154
生物は環境の時空間的な変化に反応し、好適な場所へ移動する。種間で環境変化への反応が異なると、移動にも違いが見られ、その結果分布や個体数にも影響すると考えられる。複数種が同所的に生息することが多いタナゴ類において、産卵に用いる二枚貝の個体数や種構成がタナゴ類の分布や個体数の種間の違いに影響することが報告されているが、移動についての研究例はほとんどない。本研究においては、在来種としてアカヒレタビラとタナゴ、外来種としてタイリクバラタナゴの3種の移動を標識再捕獲により調べ、種間で比較した。
標識再捕獲は霞ヶ浦南部に位置する全長約5.5km、幅約5mの農業用水路で行った。皮下染色したタイリクバラタナゴ992個体、アカヒレタビラ336個体、タナゴ50個体を2009年5月下旬から6月上旬に水路中央付近で放流した。その後、6月下旬から11月下旬にかけて2週間に1回捕獲をした。捕獲にはビンドウを用い、水路全域を100m間隔で調査した。
標識個体は、タイリクバラタナゴが140回、アカヒレタビラが21回、タナゴが12回捕獲された。移動距離の中央値は、タイリクバラタナゴが600m、アカヒレタビラが2400m、タナゴが2100mであった。移動距離の範囲は、タイリクバラタナゴが0〜3200m、アカヒレタビラが1200〜2800m、タナゴが300〜3300mであった。タイリクバラタナゴでは92%、アカヒレタビラでは86%、タナゴでは92%が上流方向への移動であり、移動方向については3種とも同様の傾向を示した。タイリクバラタナゴは低溶存酸素耐性が在来種よりも強いことが明らかとなっていることから、環境の変化に対してあまり移動しないと考えられた。