| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-157
海溝は海洋地殻が大陸の下に沈み込む地域に生じ、水深6000~11000mにまで及ぶ。海溝は周辺から孤立しており、生息する大型底生生物種の約60%、属の10~25%が海溝に固有である。一方、メイオファウナでも、チャレンジャー海淵には原始的な有孔虫が優占していることが報告されている。しかし、メイオファウナは個体数・バイオマス共に大型底生生物を凌駕し、深海生態系の重要な構成要素であるにも関わらず、海溝域メイオファウナの群集構造は、ほとんど分かっていないのが現状である。そこで本研究では、沖縄本島沖の南西諸島海溝周辺域と、北海道釧路沖の千島海溝周辺域において、メイオファウナの優占グループの1つであるソコミジンコ類(甲殻類: カイアシ下綱)の属レベルでの群集構造の空間変異を解析した。
南西諸島海溝周辺域、及び千島海溝周辺域におけるサンプリングは、それぞれ2005年5月、2001年9月にマルチプルコアラーを用いて行った。調査測点は海溝を横断するように設定し、それぞれ12測点(水深1290~7146m)、8測点(水深556~7088m)から堆積物サンプルを得た。得られた堆積物サンプルからソコミジンコ類を抽出し、成体を属レベルまで同定した。
両海域とも大陸斜面・海溝・大洋底の測点間の非類似度が70~90%と高く、地形によりソコミジンコ類の群集構造が異なることが示された。しかし、海溝で出現した属のほとんどが既知のものであり、未知の属の割合はどの地形でも低いことから、海溝に固有な属が存在するという訳ではなく、属の相対密度が異なるために群集構造が異なっていると考えられた。