| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-159
亜熱帯域に位置する屋久島の潮間帯岩礁域には、藻類食のイソギンポ科魚類が優占して出現する。これらのイソギンポ科魚類の多くは、藻類が多く、水温が高くなるタイドプール表層に偏って分布することが明らかとなっている。しかしながら同じ潮間帯で複数種の藻類食魚が共存できる機構については不明な点が多い。本研究では、屋久島の潮間帯岩礁域で特に優占する3種の藻類食イソギンポ科魚類(クモギンポ・タマギンポ・ロウソクギンポ)の汀線からの距離を基準とした水平的な分布パターンを明らかにする目的で、平均水深23cm未満の平らなタイドプール20ヶ所においてそれらの魚類と3種類の底質(藻類・岩盤・堆積物)の密度について調査を行った。コドラートを用いた調査の結果、クモギンポと堆積物は汀線から離れるにつれて密度が増える傾向にあり、逆にロウソクギンポと藻類は汀線に近付くにつれて密度が増加する傾向にあることが明らかとなった。しかし、タマギンポと岩盤については、汀線からの距離に関連した傾向がみられなかった。さらに、タイドプールの体積と藻類食魚3種の関係に注目すると、タマギンポのみプールのサイズと正の相関関係がみられた。以上の結果から、穴の中で営巣するクモギンポとロウソクギンポの2種は水平的に棲み分けを行っており、岩の間隙などに生息するタマギンポは、先の2種の分布に関係なく、広いタイドプールを選んでいると考えられた。また、クモギンポおよびロウソクギンポの密度がそれぞれ堆積物および藻類の密度と正の相関関係にあったことから、両者が餌資源として利用する藻類の種が異なっていることが予想される。