| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-167

アリー効果とケンミジンコの定着成功度:実験による解析

*石井恵一郎,牧野渡,占部城太郎(東北大・生命)

動物プランクトンであるケンミジンコでは、環境の良く似た近接する湖沼間でも生息種が異なることは稀ではない。このような現象の原因として、少数個体の侵入では雌雄の遭遇確率が低く繁殖機会が限られるため新しいハビタットへ容易に定着できない、あるいは多数派である先住種の繁殖干渉などにより定着が阻害されるなどの可能性が考えられる。そこで、新しいハビタットへの侵入定着に際して、このような正の密度依存性(アリー効果)がケンミジンコ種にも作用するかをメソコスム実験により調べた。

実験は、日本に広く分布するAcanthodiaptomus pacificusを対象に、近隣のため池の植物プランクトンを接種した90Lの水槽32器を屋外に設置して行った。実験にあたっては、A. pacificus成熟雌雄のペア数(2、4、6、9、12ペア)と先住種の有無、すなわち近似種であるSinodiaptomus valkanoviがいる場合(100個体/水槽)といない場合を処理区とした5x2通りの組み合わせで行い、ケンミジンコの繁殖期間としては十分な12日後のノープリウス幼生数と卵数から雌1個体あたりの産仔数を求めた。この実験の結果から、ケンミジンコ種の新しいハビタットへの侵入定着や分布パターンに果たすアリー効果や先住種の役割について議論する。


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