| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-170

ため池群における魚類群集の入れ子分布とその促進要因

*満尾世志人,角田裕志(農工大・農),土井真樹絵,大平充(農工大院・農),千賀裕太郎(農工大・農)

群集構造の形成要因に対する理解は、生態学における主要なテーマの一つである。また群集構造のパターンに関する知見は、生物多様性保全の観点からも重要な示唆を含むと考えられる。種数-面積関係と並び、多くの分類群や空間スケールにおいて広く見出されている群集構造として入れ子構造が挙げられる。近年になり定量的な評価指標が考案されつつあることもあり、入れ子構造に注目した群集構造のパターンとその形成要因に関する研究が活発化しており、これまで群集の入れ子構造を促進させる主要な要因として移入と絶滅が指摘されている。本研究ではため池に生息する魚類に関して、貧酸素条件に対する耐性の有無に着目し、生態的特性の違いが群集構造の形成要因に与える影響について考察することを目的とした。

調査は岩手県南部に点在する31のため池において実施した。入れ子構造の判定にはBINMATNESTを用いた。その結果、ため池の魚類群集はランダムとは有意に異なる入れ子構造を示し、特に非耐性グループにおいて、耐性グループに比べ高い信頼性の入れ子構造を示した。また、非耐性グループの入れ子構造はため池の規模(絶滅に関連)と孤立要因(移入に関連)の両者と関連が見出されたのに対し、耐性グループでは孤立要因とのみ関連が認められた。以上の結果から、種の生態的特性により群集構造の形成に対する各要因の働きは異なっており、ため池の魚類群集では貧酸素条件に対する耐性の有無が群集構造の決定に対して重要な働きをすることが示唆された。


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