| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-171
微小陸貝はどのようにして分布を広げているのだろうか?
近年、小笠原諸島母島の鳥の糞からノミガイ(Tornatellides boeningi)などの小型陸貝の殻が極めて損傷の少ない状態で発見された。そこで我々は、野外で糞から陸貝が見つかったメジロとヒヨドリにノミガイを与え、実際に生きて排泄されるかを実験的に検証した。排泄された個体の生存率を調べたところ、およそ15%が生還することが示された。また、小笠原諸島父島および母島におけるノミガイのmtDNAを用いて、AMOVAによる集団構造の解析、Mantel testによるIsolation by distanceの検証を行った。その結果、父島集団ではIsolation by distanceの効果が検出されたのに対し、母島集団では遺伝子流動が頻繁に起きており、長距離分散が起きている可能性が示唆された。自力による移動力の著しく低い微小陸貝が能動的に長距離分散を行っているとは考えにくい。しかし、鳥の捕食による受動的な分散の可能性があること、さらに父島ではこれまで鳥の糞から陸貝が見つかっていないことからこれらの結果を説明できる。
以上の結果から、鳥の捕食による分散というあたかも植物の種子のような微小陸貝の分散様式のひとつが明らかになった。