| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-172
時間・空間的に離散したパッチ環境は、生息場所や餌などを共有し近いニッチを占めると考えられる種の出会う頻度が低く、種間競争よりも種内競争が強く働くため競争排除が働きにくく多種共存を可能にすると考えられている。そのようなパッチ環境として、里山に多くみられる竹林内の切株に出来る小さな水溜りが挙げられる。
日本の竹林では、ヒトスジシマカ、ヤマトヤブカ、キンパラナガハシカその他数種類の蚊科幼虫が、しばしば同所的に発生している。この中でヒトスジシマカとヤマトヤブカには実験により競争が起こることが確認されており(J.S.Armistead 2008)、ヒトスジシマカが競争的に優位であった。また、ヒトスジシマカとキンパラナガハシカも実験室では競争が確認されており、(Sunahara and Mogi 1997)、この実験では短期および長期的な競争のステージ前半ではヒトスジシマカが優位であったが、長期的な競争のステージ後半になると、キンパラナガハシカが有意になることが報告されている。
これらの操作実験は2種が出会った場合競争が働くかどうかの検証であり、自然界でどのくらいの頻度で他種と遭遇するかという空間的特性が考慮されていない。またこれまでの野外観察では、それぞれのパッチの生産性の評価が不十分であった。
私たちは、金沢大学角間キャンパスの竹林に合計60個の産卵トラップを設置し、定期的にトラップの中身を回収し、幼虫の種、個体数、発生ステージなどを記録した。また、トラップから発生する蛹を毎日回収し、羽化後に種と翅の長さを計測し、各パッチの生産性を記録した。これらのデータから、竹林における蚊群集が平衡(競争が働く状況に群集があるのか)か非平衡か、竹の切株の持つ空間分布特性が群集にどのような影響をあたえているのか考察する。