| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-178
多くの亜社会性昆虫では片親だけが子の世話をするが、両親で子の世話をする昆虫はモンシデムシ類、クロツヤムシ類、ナガキクイムシ類、フンチュウ類などで知られているだけで、非常に限られた昆虫にしかみられない現象である。モンシデムシ属では、両親が小型脊椎動物の死体を子供の餌として利用し、捕食者や他の腐食者から子供や資源を防衛する。また親は防衛以外にも、死体に消化液を塗り付けて処理し、その後餌の吐き戻しによって孵化してきた幼虫に給餌することが知られている。しかし、雄の給餌量は雌よりもはるかに少なく、孵化幼虫到着後に雄を取り除いても雌の給餌量は変化しないことが報告されている。したがって、雄が給餌に参加する意義は不明な点が多い。そこで本研究では、モンシデムシ属のヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatusを材料として、繁殖資源が少ない場合と多い場合で雌雄の給餌期の行動を定量的に測定し、雄が給餌に参加する意義を検討した。飼育容器に繁殖資源として鶏肉を設置し(10gおよび25g)、ヨツボシモンシデムシの雌雄ペアを放し繁殖させた。孵化幼虫に給餌を開始してから幼虫が蛹化のために分散するまで、ビデオカメラで毎日1時間給餌行動を撮影した。その結果、資源量が少ない場合は雄が給餌に参加しない場合が多く(69%)、資源量が多い場合は雌雄が給餌に参加した。資源量が少ない場合の雌の給餌時間は、雄が給餌に参加した場合の方が、雄が給餌に参加しなかった場合に比べ短い傾向がみられた。給餌に参加した雄の給餌時間は雌の給餌時間より短かった。資源量が多い場合は雌雄の給餌時間の差が小さくなる傾向がみられ、ヨツボシモンシデムシでは他のモンシデムシ類より雄の給餌量が多いことが判明した。これらの結果から雄が給餌に参加する意義を考察した。