| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-182
雄の適応度は、交尾回数が増えるに従い、直線的に増加する。一方、雌にとっては、1回の交尾ですべての卵を受精させるのに必要な数の精子を得られるのであれば、交尾は1回で十分である。ここでは、極端な雌偏向性比を示す寄生バチMelittobiaの雌において、多回交尾が進化した要因について、特に交尾回数とクラッチサイズの関係から検討する。Melittobiaの雄は分散せず、交尾は羽化した寄主上でのみ行われる。本属の性比は、母親の産卵状況によらずいつも雄率1-5%を示し、さらに殺し合いの雄間闘争によって、雄成虫の割合はさらに減少する。そこで、今回は特に、雌が必要な数の精子を得るために、複数回交尾を行う可能性について検討する。
頻繁に交尾を経験した雄は、1回の交尾で雌に渡す精子数が減少すると考えられる。このため、頻繁に交尾した雄と交尾未経験の雄のいずれかと処女雌を交尾させ、それぞれの雄と交尾した雌が、2回目の交尾を行う確率について比較する。また、2回目の交尾を拒否した雌と、2回目の交尾を行わせなかった雌(2回目の交尾を行わせた場合、交尾する雌としない雌が含まれる)に産卵させ、娘の数をカウントすることにより、それぞれの雌が所有していた精子数を比較する。さらに、雌の交尾回数を制限させず、自然環境に近い状態で交尾を行い、寄主から分散してきた雌を産卵させ、所有していた精子数を推定することにより、通常状態での雌の交尾回数を推定する。以上の結果より、雄と雌にとっての1回の交尾で授受する最適な精子数について検討し、雌の多数回交尾との関係を考察する。