| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-191
沿岸域では潮の干満が12.4時間周期でみられ, さらに大潮・小潮の繰り返しが約半月(14.8日)周期でおこる. 潮汐周期性は沿岸魚類の産卵周期や時間帯を決定する重要な要素であると考えられる. 本研究では, 同時期に同じ空間でおこなわれるベラ類の産卵から, 繁殖リズムと潮汐周期等の関連を考察した.
千葉県館山湾では, 夏期に数十個体から1000個体以上のベラ科魚類が特定の岩礁に集まり産卵をおこなう群れ産卵group spawningが観察される. 産卵場となるポイントは水深7〜8mの岸から沖に延びた岩礁の先端部で周囲の岩盤よりやや高く盛り上がっている.
館山湾では小潮から大潮にかけて満潮時刻が朝方から夕方ヘと推移し, 大潮から小潮にかけては, 満潮時刻が日没後となる. ホンベラHalichoeres tenuispinisでは小潮時には満潮時刻付近で産卵し, 大潮になるにつれて満潮時刻よりも2時間ほど早く産卵していた. 満潮時刻が日没後になると, 日中の広い範囲の時間帯(9:00〜15:00)に産卵していた. カミナリベラStethojulis interruptaも小潮から大潮にかけて産卵時刻が遅れていく傾向がみられた. オハグロベラPteragogus aurigariusは日没30分から120分前の一定時間に産卵し, ニシキベラThalassoma cupidoは主に午前中(9:00〜12:00), キュウセンH. poecilopterusは朝方(8:50〜9:50)に産卵していた. 5種類のベラ類には潮汐周期性あるいは日照時間に同調した日周期性が関係したそれぞれの繁殖リズムが存在した.