| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-200

社会性昆虫シロアリの概日行動リズム

*渕側太郎1,松原健太2,松浦健二2,宮竹貴久1(1岡山大院・環境・進化生態, 2岡山大院・環境・昆虫生態)

社会性昆虫は複雑な社会のなかで協調的作業を行っており、コロニー内において、各個体の生物リズムは適切に調節されていると考えられる。代表的社会性昆虫であるシロアリは、アリやハチとは全く異なる分類群に属しながら、これについての概日リズムの研究はあまり無く、日照下へ出かけるシロアリ種のみについて行われている。シロアリ目では、腐朽した木材に営巣し、かつ、その木材を採餌するという生活スタイル、すなわち、光環境変化に乏しい状況で暮らす種群が少なくない。そういったシロアリにおいては、社会から受ける環境刺激の程度が、他の種に比べ大きいと考えられる。

本研究では暗下で社会生活をするヤマトシロアリReticulitermes speratusのリズムを明らかにするために、まず、その個体における歩行活動リズムの多様性と、そのリズムの基本的特性を調べた。有翅虫(巣外で活動するカースト)ではリズムが見られたのに対し、巣内で活動するカースト(職蟻、兵蟻)ではリズムが見られなかった。職蟻について、環境因子に対する直接的な反応があるのかどうか検証するため、光や温度サイクルが職蟻の活動性にどう影響を与えるのかどうか調べた。その結果、明暗サイクル下・温度サイクル(25-20℃)下の両方で周期性は見られなかった。他の昆虫では、通常、これらの光や温度サイクルに活動リズムが同期することが報告されているが、少なくともヤマトシロアリの職蟻は、これらの条件では同期しないことが分かった。今後、野外においても光や温度サイクルに同期しないのか検討する必要がある。本講演では、予備的に計測した野外のコロニーの活動リズムについても報告する。


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