| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-201
不妊カーストを有する生物にとって,カースト比の調節は非常に重要である。なぜなら不妊カーストは繁殖虫を助け,コロニーの防衛を行うという点では有利であるが,過剰な不妊カーストの生産はコストとなるためである。
キンウワバトビコバチCopidosoma floridanumは多胚性の卵‐幼虫寄生蜂であり,1つの卵から2000匹ほどの個体が生じる。1つの卵から発生する個体は遺伝的にクローンであり,前期に分化する個体は不妊のソルジャー幼虫に,後期に発生する個体は生殖虫になるというカースト制を有する。本種のソルジャー幼虫は,寄主体内の同・他種の寄生蜂に対して排他的行動を行うことが知られている。また雌ソルジャーは攻撃性が高く,共寄生(他種との競争)が起きた場合はソルジャー幼虫の増員を行う。一方,雄ソルジャーの攻撃性は低く,共寄生が起きてもソルジャー幼虫の増員は起こらない。さらに雄ソルジャー幼虫の数や出現時期は日本とアメリカで異なる可能性が考えられている。このようにC. floridanumのカースト構成は他の社会性生物にはない特徴を有しているが,どのような進化的背景があるのかは不明である。
そこで,本種のカースト構成にはどの程度遺伝的変異が存在するのかを明らかにするために共通環境実験を行い,地理的変異および家系間変異を観察した。さらにfull-sib解析による遺伝率の推定を行うことで,カースト構成は遺伝的に決定されているのかを明らかにした。以上から,C. floridanumにおけるカースト構成の進化過程を考察する。