| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-202
近年、社会性昆虫において、次世代への遺伝的寄与を巡る雌雄の性的対立に対する関心が高まっている。アリやシロアリのいくつかの種において、女王が産雌単為生殖を行い、自身の適応度を高め、雄が対抗適応を行っていることなどが知られている。我々の研究により、ヤマトシロアリReticulitermes speratusにおいて、創設女王はほぼすべての二次女王(巣内で創設女王の生殖を引き継ぐ)を単為生殖で生産していることが明らかになった(Matsuura et al. 2009, Science)。さらに、創設王は長命であり、創設女王の死後も、多数の二次女王と繁殖を行っていることが明らかになった。我々の調査で見つかったR. speratusのコロニーの平均二次女王数は、51.2±99.2(SD)頭であり、最も多いコロニーでは、1頭の創設王と676頭の二次女王によって率構成されていた。このように膨大な数の二次女王は果たしてどのくらいの割合で、単為生殖で作られているのか?本研究では、676頭の二次女王を有するコロニーにおいて、5つのマイクロサテライトマーカーを用い、創設王とワーカー、全ての二次女王の分析を網羅的に行った。その結果、676頭全ての二次女王が単為生殖で生産されていたことが明らかになった。これは、創設女王が、次世代への遺伝的寄与を自らの死後も、そのまま維持するための戦略であると考えられる。
また、R. speratusにおいては、特定の遺伝子座がホモ接合の個体が女王位を継承するということが松浦らの研究で示唆されている。一方で単為生殖能力を持たないシロアリR. flavipesは、創設王、創設女王共にコロニーの早期に二次王、二次女王に繁殖を引き継ぐことが知られており、この単為生殖能力を持たないR. flavipesにおいても、同様の分析を行った。