| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-205

シロアリの女王フェロモンの特定

*山本結花,日室千尋,横井智之,松浦健二(岡大院・環境・昆虫生態)

真社会性昆虫は、繁殖の分業によって特徴付けられる。つまり、行動様式の異なる個体が一つの集団内で分業し、協力し合うことにより、社会が維持されている。それ故に、ワーカー繁殖のような反乱は許されず、それを抑制する機構が存在している。その機構の一つが、女王フェロモンであり、女王は女王フェロモンを出すことにより、ワーカー繁殖を抑えている。これまで、アリやハチなどの膜翅目の社会性昆虫では、女王フェロモンが同定されてきた。さらに、近年では、女王フェロモンの研究において女王・ワーカー間コミュニケーションに関するトピックが脚光を浴びつつある。Camponotus floridanusというアリに存在する卵による新女王分化抑制メカニズムがその代表的な例である。一方、シロアリ目においては、女王フェロモンの存在自体は古くから示唆されてきているものの、未だ同定すらされていない。現在まで、50年間に渡って、シロアリにおける女王フェロモンの存在を示唆する研究は数多くなされてきた。しかし、標品物質で新女王の分化を抑制できた例はなく、シロアリにおける女王フェロモンの正体は、いまだ謎のままである。

そこで本研究では、化学分析と生物検定によりシロアリの女王フェロモンの特定に取り組んだ。さらに、膜翅目で報告されているような、卵を介した女王・ワーカー間コミュニケーションについても検証した。その結果、シロアリの女王と卵からは2種類の同じ揮発性物質が出ていることを特定し、その物質の標品によって新女王の分化を抑制することに成功した。この結果から、女王フェロモンによるシロアリ社会の維持機構についての全体像を考察する。


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