| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-HS02

六甲山におけるキノコの長期観測データを用いた出現種数の推定および気象要因との対応分析

*森田綾子, 大西里佳(兵庫県立御影高校)

六甲山におけるキノコの生物多様性の実態を明らかにするため「兵庫きのこ研究会」、「兵庫県立人と自然の博物館」と連携し、現地でのキノコ調査と標本化を行っている。今回の研究発表は、同研究会との過去8年間(3月〜11月)の観察データを用いて将来的な出現種数の推定、各種の出現傾向の分析を行った。まず出現種数の推定では、前提条件が異なる4つの方法を設定し、各方法で経年ごとに新規加入する種数の減衰傾向を回帰式に適合させ、数式から新規加入が1種以下となる年数までの積分値を求めた。設定した前提条件は、回帰式、初年度の値、同定不確定種(sppとなる種)の取り扱いの点で異なる。4つの方法で検討した結果、新規加入が10種以下となるまでの年数は8〜29年、1種以下となるまでの年数は8〜241年、推定種数は714〜1953種と推定された。この推定値と各地でのキノコの確認種数や同研究会の経験的な推測数と比較して、推定種数として1000〜1300種が妥当だと判断した。次にキノコの出現傾向を分析するため、まず出現頻度別に(1)いつでも見られるキノコ、(2)季節性のキノコ、(3)一過性のキノコ、(4)希少キノコの4つのグループに分けた。その結果、出現頻度が8年間を通じて1〜9回となる(4)グループが約70%と大半を占めた(同定未確定種を含む)。さらに、グループごとにキノコの発生と関係が深い降水量との関わりを調べた。解析は、観察日を基点として、各3、5、10,15,20、30日前までの期間の総降水量と各グループ種の出現率との関係を調べた。その結果、(2)〜(4)のグループともに20日前までの降雨量との関係が深く、特に(2)グループが最も影響を受けていた。これは、数日前の単発的な降雨ではなく、一定期間以上の継続した降雨がキノコの多様性に寄与するためだと考えた。


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