| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-HS04
池尻川は、兵庫県三田市の2つのニュータウンの間を流れる全長2kmの川である。以前は、農村の間を流れる小さな川で、ホタルを始めたくさんの生き物が見られたが、20年前のニュータウン開発時にコンクリート三面張りに改修されており、河床はコンクリートがむき出しで水深も浅く、一見生物がほとんど居ないように見える。そのような川であるが、毎年5月から6月には、少数であるがホタルの成虫を観察することができる。そこで、コンクリート三面張りのままで、この川のホタルを増やし、河川改修前のように広い範囲でホタルが乱舞する姿を見られるようにするために、兵庫県立人と自然の博物館や地元の方と協力してホタル再生に取り組んでいる。
まず、どのようにしてこの川でホタルが成育しているのかを調べた。その結果、川の上流の一部に河床に土砂がたまり植物が繁茂している場所があり、そこでホタルの幼虫を発見し、4月にはその幼虫が2.6mのコンクリート壁を登っているのを観察することができた。この調査と平行して、ホタルの幼虫の生息域を広げるために、河床に水制を設置する施工を行った。施工にあたっては、幼虫の餌となるカワニナを増やすこと、幼虫の生息できる場所を確保することの2点を考え、水制の形を工夫した。水制設置後は、定期的にカワニナの数を調査し、その効果を調べている。