| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-HS15

土の中の植物たち −渡良瀬遊水地の土壌シードバンク調査−

*堀内勇寿, 青木亮, 稲葉千迪, 大場未来, 横地真紀(栃木県立小山西高等学校)

私達の住む栃木県小山市には、渡良瀬遊水地という広大な湿地がある。ここは、かつては頻繁に河川が氾濫する土地であり、また沼や水田なども多く、多様な湿地環境が存在していた。しかし現在では、その大部分がヨシPhragmites australisやオギMiscanthus sacchariflorusなどの高茎草本に覆われており、植物の疎らな湿地や沼などを生育地とする植物は衰退した。衰退・消失した植物には、全国版RDBに記載されているものも多い。

土壌シードバンクには、地上植生には見られないものも含め、いろいろな植物の種子が保存されていることが知られている。そこで、現在の渡良瀬遊水地において、地上では見られなくなった植物が土の中に存在するかを調べるために、土壌シードバンク調査を実施した。3月上旬に、渡良瀬遊水地第2調節池内の主にオギが優占する場所で土壌(表層5-20cm)を採取し、水位が異なる3条件(+5cm,±0cm,-8cm)のプランターに撒きだして、発芽した植物の種名と個体数を記録した。

9月下旬までの調査で計40種が確認され、そのうち37種について同定できた。これらのうち29種は、土壌採取地付近の地上植生では見られなかった種だった。また、地上植生では確認されなかった全国版RDB記載種も2種(カンエンガヤツリCyperus exaltatus Retz.var.iwasakiiとミズアオイMonochoria korsakowii)出現した。

以上のことから、渡良瀬遊水地の土壌シードバンクには、地上では見られない植物の種子が存在することが明らかになり、湿潤で地面まで光が届く条件になれば、そのような環境を好む種子の発芽が可能になることが示唆された。


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