| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-HS16
土壌生物の調査は一般に広く行われている。しかし、その多くは採集地の植生と土壌生物の種類の関係を調査したものであり、土の深さと土壌生物の種類の関係についての具体的な知見は乏しいものであった。深さごとの土壌の層の状態と土壌生物の種類の総合的な調査は、開発などによって土中のある層が取り除かれた際に土壌生物が受ける影響を考察することにもつながる。そのため、都市化に伴う環境への影響を考える上でも興味深い調査と考えられる。
そこで本研究では、東京都練馬区・武蔵高等学校内のクヌギを主体とする林において、主要な土壌生物であるダニ類及びトビムシ類の分布と土の深さの関係について調査を行った。調査ではまず、地温を測定した。その後、直径7cmのプラスチック製の筒を使用し深さ3cmごとに9cmの深さまでの土を採集した。そしてツルグレン装置にかけた後、得られた土壌生物の種類を特定、記録し、そのデータを円グラフと日付ごとの表にまとめた。その結果、土壌生物は地表に近い、土壌内における粒子間の空間がより広いところほど生息する総数が増加することが明らかとなった。またトビムシ類については、地表付近の層では跳躍器を持つものと持たないシロトビムシの両方が生息するのに対し、それよりも深い黒褐色の層では跳躍器を持たないシロトビムシが生息するトビムシ類の大部分を占めることが明らかとなった。また得られた結果からは、ダニ・トビムシ類は地温の変化による生活層の変化が少ないと考えられた。