| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-HS19
私は中・高6年間, 生物部でアカネ類を研究してきた。先輩方の飛翔活動と環境条件の関係の研究から発展し, 気温が大きく変化する初夏から晩秋の間をアカネ類はいかにして生き抜いているのかを知ろうと, 現在は体温調節を研究している。今回はアキアカネ・マユタテアカネ・ミヤマアカネ・ノシメトンボを使用し, 1999〜2008年の調査をもとに発表する。アキアカネは初夏に平地から高地へ, 秋に高地から平地に移動し, ノシメトンボは夏に高地・平地の両方で見られる。マユタテアカネとミヤマアカネは夏〜秋を平地で暮らす。調査地は長野県湯の丸高原(標高約1650m), 滋野・小諸(約580m), 東京都日野市・豊島区(約80m)である。実験では, ライトをトンボの背面から当て続けた時の体温上昇の仕方および耐えられる限界体温を, 季節・移動性および雌雄・成熟度の違いで比較した。その結果, 限界体温は夏から季節が進むにつれて低下し, 移動する種よりも平地にいる種の方が, また移動する種でも高地より平地の方が個体間の幅が小さかった。体温上昇の仕方は, (1)徐々に上がるものと (2)途中で上昇が抑えられる2タイプが見られ, 平地にいる種では夏から季節が進むにつれて, 移動する種では平地から高地に行くと(2)から(1)に移行した。一方, 成熟度や雌雄の違いでは, 限界体温・体温上昇ともに差は見られなかった。以上のことから, アカネ類は雌雄や成熟度よりも季節の違いや生息地の違いで環境温度に適応することで, 限界体温や体温上昇の仕方が変化して成虫の半年間を生き抜いているのではないかと考えられた。