| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-HS28
伊豆諸島八丈島に生息するニホンイモリ(C. pyrrhogaster)は、在来個体群である考えと、本州から移入され定着した個体群であるとする2つの考え方がある。一般に伊豆諸島にはニホンイモリは天然分布していないというのが通説であるが、2008・2009年夏に八丈島に赴き、ニホンイモリの採集を行い、本州産イモリ(東京都産・山梨県産)との形態比較を行った。採集した八丈島産イモリの多くが本州産イモリとは異なる形質をもっており、その違いは以下の3つが顕著な差として認められた。
(1)腹面の赤色部が濃く、その面積が黒色部に比して大きい。
(2)オスの婚姻色が紫色を呈した鮮やかな色彩で、顔には赤色の模様が入る。
(3)メスの体側に赤線が入る。
採集当初は明らかに本州産とは異なる形質を保持していが、八丈島産イモリを実験室内で飼育(明環境で2ヶ月間)した結果、腹面の赤色が薄くなり、黒色部の面積が増大した。2008年に採集したオスのイモリでは、繁殖期に現れる婚姻色も薄くなり、採集時の美しい婚姻色が失われた。そこで、八丈島の生息環境に近い環境で飼育(ダークウォーター・暗環境で2ヶ月間)したところ、腹面の赤色部が増大し、黒色部の衰退が見られた。
以上のことから、八丈島に生息するニホンイモリは、本州から分断され特異的に進化した個体群ではなく、移入により持ちこまれた個体群が環境に適応した結果生じた環境変異個体群である可能性が考えられた。