| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-005

潜葉虫ネズミモチクロホソガの葉内における潜葉部位の季節変化

綾部慈子

植食性昆虫の一群である潜葉虫は、幼虫期に葉の内部に潜り込み、表皮は無傷のまま内部組織のみを摂食するという特異な摂食(潜葉)習性を持つ。その摂食痕はマインと呼ばれ、葉緑素が欠けるため視覚的に目立つ。潜葉習性の獲得により、紫外線や乾燥からの緩和、トゲなどの植物外部防衛や捕食者の回避といった利点を得た一方、マインの視覚的目立ちやすさは、産卵管によってマイン内の潜葉虫を攻撃可能な寄生蜂を誘因し、高い寄生圧を招くという不利な点ももたらした(Connor & Taverner 1997)。

潜葉習性発達において、葉内における潜葉場所は以下の4タイプに多様化した;(1)葉の表側のみ、(2)裏側のみを潜葉するタイプ、(3) 1個体が葉の表・裏側の両組織を潜葉するタイプ、(4) 1個体が表・裏側のどちらか一方を潜葉するタイプである。潜葉場所多様化の要因として、寄主植物葉の特性や寄生回避との関連性が指摘されているものの(Reavey & Gaston 1991)、これらの要因が実際に潜葉場所選択にどのような影響を及ぼしうるのか明らかになっていない。しかしながら、上述(4)のような葉の表・裏側を選択的に利用する種を用いて、潜葉場所選択と葉特性や寄生圧との関係を探れば、潜葉場所多様化のメカニズムを解明する手がかりが得られると期待される。

本発表では、常緑性小高木ネズミモチの葉の表・裏側を選択的に利用する多化性の潜葉虫ネズミモチクロホソガを材料に、潜葉場所選択と葉特性との関連性に注目して調査する。まず、ホソガの葉表・裏におけるマイン形成数の推移から季節変化を調査する。次に、寄主植物の葉特性として、クチクラ厚や硬度などの物理特性、及び、N量やタンニン量の栄養特性の季節変化を調査し、葉特性の季節変化が、ネズミモチクロホソガの潜葉場所選択に与える影響を明らかにする。


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