| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-022
脊椎動物において色受容を担っているのは網膜を構成する2-4種類の錐体であり,それぞれが特定の波長域に反応する.脳へ送られる色情報は物体からの反射光に対して各錐体が励起した比率によって決定する.哺乳類とは異なり,ほとんどの脊椎動物は4種類の錐体を持ち,紫外線も感受領域に含まれていることが多い.最も短波長側の錐体は紫・紫外型と呼ばれ,多くの動物ではその感受性ピークは可視光内に存在し,紫外線受容能もそれほど高くないが,小型スズメ目を始め一部の鳥類などではそのピークが紫外領域に存在しており,感受性も高い.このような分類群において紫外光は社会的な情報伝達に多用されていることから,紫外線特別チャンネル仮説が提唱された.この仮説は,受容能が傑出して高い動物では,特に波長の短い紫外線信号は暗号化されていることになり,特別な意味を持ちうるというものであるが,現時点では妥当性が疑問視されている.演者らは分光光度計を用い,カッコウ科托卵鳥であるジュウイチとその宿主であるルリビタキの雛を対象に,餌請い信号形質の反射スペクトルを測定した.ルリビタキでは雛の口内を,ジュウイチでは雛の口内と,同様に餌請いに使われる翼の裏側にある口内と同色の皮膚パッチを測定した.その結果,宿主の雛と較べ,ジュウイチの両形質では全体的に反射率が高く,特に紫外領域において著しいことが確認された.これは受信者である仮親にとっての色情報が二者間で異なっていることを示しており,一義的には異なる色を呈していると言える.しかし,親子間信号を搾取する上で奇異な彩色は効果を低減させてしまう可能性があるため,実際の機能や想定される産生コストを考慮した場合,紫外領域における顕著に高い反射率は特別な機能を持っていると考えることができ,仮説を部分的に支持した.