| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-027

里山林のギャップ内を主たる生活の場とするノシメトンボの採餌活性と餌獲得量

*加藤賢太, 渡辺 守(筑波大・生物)

アカトンボの一種であるノシメトンボは、水田で羽化すると直ちに周囲の林へ移動し、そこを生活の場としている。水田へは産卵のために短時間訪れるが、その時間帯は午前中に偏り、14時を過ぎるとほとんどみられない。雌の産卵は8日に1度と推測され、約1ヶ月半の繁殖期間中のほとんど全てを林内のギャップで過ごしている。これまで、雌は、卵生産のため、雄よりも摂食量の多いことが、雌雄の排出する糞量から推定されてきた。すなわち、林内のギャップにおいて、雌は雄よりも採餌活性の高い可能性がある。調査は8月後半から9月初めに行なった。午前6時から林内ギャップを巡回し、発見した静止中の個体の採餌行動(静止場所の高さや静止場所を移動する回数、採餌飛翔の回数や距離、捕獲成功回数など)を、2人1組で観察個体を見失うまで連続して記録した。15分以上連続観察した個体のデータを解析に用いたので、平均観察時間は雌で30分(最長120分)、雄で23分(最長93分)となった。ノシメトンボの雌雄は、日の出直後から日没時まで、静止場所の前方の斜め上方を一航過する小昆虫に飛び掛かるという採餌活動を行なっていた。採餌飛翔のピークは、正午過ぎだった。雌の場合、ピーク時には15分当たり9〜10回、雄は5〜6回と、雌の方が雄よりも有意に飛翔頻度は多かった。採餌に成功した割合は、雌で約34%、雄で約33%だった。その結果、日当たり捕獲成功数は、雌で101回、雄で64回となった。林内ギャップにおいて餌となりうる小昆虫1頭当たりの乾燥重量は0.17mgだったので(岩崎ら,2009)、日当たり摂食量は、雌で約17mg、雄で約11mgと計算でき、排出した糞量から推定した日当たり摂食量と、雌雄ともに一致していた。これらの結果から、ノシメトンボの雌雄の採餌戦略について考察した。


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