| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-028

シャープマメゾウムシの世代間にみられる卵サイズ変異

*川本さつき, 石原道博(大阪府大・理)

温帯地方に生息する昆虫は環境条件の季節的な変化に適応しなければならない。昆虫の中には季節的な表現型可塑性を進化させたことで、多化性の生活環を可能にしたものもいる。本講演では多化性昆虫の季節的な表現型可塑性による季節適応の例を報告する。

本研究で調べたシャープマメゾウムシは多化性で、結実して間もない未熟な柔らかい種子から成熟乾燥して硬い種子まで利用することができる。野外で本種の卵サイズを調べたところ、柔らかい莢に産卵する越冬明け世代成虫は相対的に小さな卵を、硬い莢に産卵する第1世代成虫は相対的に大きな卵を産んでいた。卵から孵化した幼虫は、大あごで莢や種皮を食い破り、種子内部に到達する。硬い種子を利用する第2世代の孵化幼虫は、第1世代の孵化幼虫よりも種子に侵入するときの死亡率が有意に高く、硬い莢や種皮が大きな障壁となっていると考えられる。そのため、第1世代成虫は、大きな卵を産むことで、体の大きく、大きな大あごをもつ孵化幼虫を産出し、硬い莢や種皮を突破しやすくしているのかもしれない。このように、世代間で種子への侵入時の死亡率に違いがあることから、卵サイズを世代間で変化させるという表現型可塑性が進化したと考えられる。


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