| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-032
生活史多型にはさまざまなタイプがある。栄養多型はそのひとつで、個体間の相互作用から同所集団内に生じることがある。共食いを伴う多型はそのひとつである。
同時期・同所で孵化したエゾサンショウウオ幼生集団では、混み合いで、一部が顎の発達した「大口型」になり、集団が多型化する。大口型個体は丸呑みで活発に共食いを行う「共食い型」である。発育時の混み合い条件によって、同一クラッチあるいは異なるクラッチから生まれた個体は、「共食い型」と「非共食い型」へと、異なる形態発生経路を辿るのである。私たちは、集団内で斉一的でない「共食い型」の出現が起こることについて仕組みを明らかにし、その進化的解釈を試みたい。
丸呑み型の共食いで、大きな口サイズは機能的である。共食いを行った個体は、体サイズが大きくなるだけでなく顕著な「大口型」になる。こうした大口の「共食い型」個体の出現は、共食いの頻発と平行して観察される。しかし、2型化への発生経路は、この時点よりも前に、何らかの条件と仕組みによって方向づけられているはずだ。
私たちは、これまでに調べられてきた知見と、私たちが昨年に行った実験の結果から推論される事柄を統合し、集団内の個体が示す形態発生経路の2型分化プロセスを、発生のより初期へと遡って探求する試みを発表する。