| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-033
鳥類の繁殖において、巣への捕食は最も影響力が大きな繁殖失敗の原因の一つである。捕食に着目した生態学的な研究は、様々な動物種と自然環境において、その知見が豊富に蓄積されている。一方、高山性の鳥類を対象とした捕食者-被食者関係の生態学的な知見は乏しい。そこで、本研究では、この(亜)高山林に生息する代表種であるルリビタキを材料として、その繁殖失敗の原因の特定、捕食者の同定、および捕食圧の年変動といった基礎的な情報を明らかにすると共に、本研究にて判明した主要な捕食者の一つであるテンを除去操作した実験の結果について報告する。
本研究は、本種の繁殖期である5〜9月に静岡県富士山に設定した調査地内において行われた。発見した本種の巣を対象として、捕食圧を含む繁殖失敗の原因を推定し、捕食圧を求めた。巣において、雛の巣立ち前に雛・卵の消失、または卵の破壊・雛の外傷を伴う死亡が確認された場合は、これを捕食者によるものと判断し、捕食者の同定のために、その外傷のパターンを記録した。また、捕食者になりうる動物を対象として、林内にて観察した動物種を記録した。捕食が起こった時間帯を把握するため、巣内に温度ロガーを設置し、捕食が発生した時間帯を調査した。なお、一部の巣を対象としてビデオカメラによる昼夜間撮影を行い、捕食者の同定を試みた。
その結果、本調査地におけるルリビタキ個体群は、約5割を超えうる高い捕食圧に、常にさらされていた。これらの捕食は、夜間に集中して発生していた。また、撮影された映像等より、主要な捕食者はテンであると考えられた。そこで、2009年度に、捕食者であるテンを捕獲・除去する操作実験を行ったところ、そのインパクトが大きい可能性が示唆された。