| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-035

Daphnia(ミジンコ)における休眠卵生産量の種内変異

*野村篤之,占部城太郎(東北大・生命)

淡水湖沼の代表的な動物プランクトンであるDaphniaは通常、雌だけの単為生殖で増殖する。日照・餌条件などの変動によりDaphniaにとって「不適な環境」になると雄が出現し、有性生殖で休眠卵が産出される。この有性生殖の引き金となる「不適な環境」に対する感受性や有性生殖の頻度はDaphnia種間で異なる。近年の研究によれば、これらの特性が同種内のクローン間でも異なることが示唆されている。もしクローン間で「不適な環境」に対する感受性に違いがあるのなら、種内での自由交配が制限されることになり、有性生殖による遺伝的多様性の維持やそれに伴う淘汰圧の緩和への効果も制限されると考えられる。そこで、本研究では、クローン間での「不適な環境」への感受性の違いをみるため、国内外の5湖沼から得たD. pulexクローン間での雄と休眠卵の生産量を比較した。雄の生産量を比較するために、成熟した雌個体に幼若ホルモン様物質を投与することで雄生産を誘導し、雌1匹あたりの雄個体生産数を評価した。休眠卵の生産量を比較するために、世代間で投与する餌量を操作して休眠卵生産を誘導し、その生産頻度を評価した。これらの実験結果から、「不適な環境」に対する感受性や有性生殖の頻度の種内変異とその意味について考察する。


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