| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-156
2007年,気候変動に関する政府間パネルは,温暖化に伴って高標高域の積雪量が減少していることを報告した。積雪量の減少に伴い融雪時期が早まりつつあり,その結果,高標高域における大規模な山火事の発生頻度が上昇している。さらに,近年頻発する山火事は,過去の森林火災抑制プログラムによる生態系改変に原因があるとも考えられている。地球温暖化と人間による森林利用といった相互作用を受けて,大規模山火事が頻発し始めている可能性が考えられる。北米においては,北部ロッキー山脈が,この20年程の間に山火事頻度が最も急増した地域である。カナダ・クートニー国立公園では,2001年と2003年の山火事で亜高山帯林の大部分が燃えた。山岳森林景観を焼き尽くす山火事は,見た目には確かに空前絶後の大規模な災害に思える。しかしながら,このような自然現象を単に災害と認識することは早計かもしれない。もしもこのような大規模なイベントが生態系に必要な自然現象ならば,災害と認識し排除することは,生物相や生態系のプロセスに対して,多大な負の影響を与えてしまう。必要な山火事を排除することは生態系サービスや生物多様性に負の影響を与えるが,自然に起こり得る以上の山火事も生態系を破壊し劣化させてしまう。そこで,本研究では,上記の国立公園を対象として,樹木年輪から抽出される過去の気候変動や山火事体制の情報をもとに,1)過去数世紀間の中長期的な地域の気候条件の変動と山火事体制との関連性を明らかにし,同時に,2)火災抑制プログラムによる山火事体制の改変状況を評価する。以上をもとにして,最近の大規模な山火事が,自然撹乱現象としてどの程度許容され,どの程度人為災害として誘発されてしまったのかについて議論する。