| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-161
琵琶湖では、絶滅危惧種などの希少な種が、湖岸部や内湖に残されていることが確認されているが、湖岸の改変や干拓により生育地の破壊が進んでいる。また、琵琶湖では毎年、沿岸部の航路維持のための浚渫が行われており、浚渫土の有効利用が求められている。本研究では、航路維持浚渫土に含まれる埋土種子の組成と分布、それらに影響する環境要因を明らかにし、希少種を含んだ植生復元に向けた浚渫土の有効性を検討することを目的とした。2008年9〜10月に浚渫された北湖沿岸部8地点の浚渫土を調査の対象とし、2009年3〜11月に、1日1回の潅水条件および0、5、15 cmの湛水条件下で、撒き出し実験を行った。実験の結果、車軸藻植物2属、蘚苔植物1種、シダ植物1種、被子植物50種が発芽した。このうち、環境省のレッドデータブック記載種は、イチョウウキゴケの1種であった。水生植物を対象として2008年8月の植生との類似度をJaccardの指数を用いて算出した結果、いずれの地点においても0.35以下と低かった。また、オオカナダモやコカナダモといった外来種は浚渫前には記録されていたが、発芽はしなかった。全発芽個体数と水生植物の個体数に関係する要因を、一般化線形モデルを用いて検討した結果、底質の砂の占める割合と前回の浚渫からの経過年数と有意な負の関係にあった。砂の占める割合は波浪エネルギーと正の相関があったことから、波による浸食が小さい地点に種子は堆積しやすいと考えられた。特に、胞子サイズの小さいミズワラビ、イチョウウキゴケは、砂の占める割合が小さい地点に分布していた。また、航路の植物量が多いほど浚渫期間が短くなることから、浚渫前の植物量が種子量に影響することが示唆された。