| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-162
2004年よりブナ科樹木萎凋病によるナラ枯れが顕在化している長野県飯山市では,1750年にも同様の被害が発生していた。当時の様子は古文書に,「神社の社叢において,多数のナラ樹の葉が夏頃から変色し始め,秋にほとんどが萎凋枯死した。虫は樹幹に加害しており駆除の手段がない」と記されていた。また,対処法として,被害発生の翌年,直径19〜35cm程度のナラ樹35本が売却され,売上金が社殿の修復料に充てられたことや,他の枯死木から約500俵(約9.4t)の木炭が作られたことが記されていた。これらの状況から,当時の被害はカシノナガキクイムシが病原菌Raffaelea quercivoraを伝播して発生するブナ科樹木萎凋病による被害であると考えられる。すなわち,カシノナガキクイムシは江戸時代以前から我が国に生息しており,ブナ科樹木萎凋病は社叢のような大径木が多い立地で発生を繰り返していた可能性が高い。