| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-166

内部サイズを考慮した樹洞密度推定

小野寺賢介(北海道林試)

樹洞は、鳥類や哺乳類など広範な生物が繁殖場やねぐらとして利用する重要生息地である。そのため、樹洞密度は生息地の質を評価する指標となりうる。樹洞密度を評価指標として用いる場合、樹洞のサイズを考慮して樹洞密度を求める必要がある。評価の対象となる樹洞利用種によって利用可能な樹洞サイズが異なるためである。樹洞サイズで重要なのは、入口の大きさと内部の奥行き、深さである。しかし、内部の奥行き、深さを地上から測定するのは通常困難である。そこで、樹洞木の胸高直径(DBH)、樹洞の入口の大きさといった容易に測定できる要因から内部サイズ(3段階に区分)を推定する方法を検討した。267本の樹洞木を対象に、DBH、樹洞入口の大きさと地面からの高さ、樹洞の奥行きと深さを記録した。樹洞の奥行きと深さの測定には樹洞内部観察用CCDカメラを利用した。奥行きと深さから樹洞の内部サイズを3段階に区別した(奥行き10cm未満,深さ5cm未満:小; 奥行き10cm以上,深さ5cm以上70cm未満:中; 奥行き10cm以上,深さ70cm以上:大)。3段階の内部サイズ区分は順序のある変数と考え、内部サイズを目的変数、DBH、樹洞入口の大きさおよび高さを説明変数として順序ロジスティック回帰分析を行った。その結果、DBHが大きい樹洞木にある入口が大きい樹洞ほど内部サイズの大きい樹洞である可能性が高いことが分かった。DBH 36cmの樹洞木に入口2.5cmの樹洞があった場合、内部サイズが中もしくは大である可能性は10%であった。

演者は、内部サイズを考慮しないという条件で、樹洞のある確率を樹種とDBHから推定するロジスティック回帰式を作成している。この回帰式と本研究で求めた回帰式を統合することで、内部サイズを考慮した樹洞密度推定が可能になる。


日本生態学会