| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-171
林分状態の把握だけでなく林分の枯死率を予測できる健全度評価法の確立を目指した。調査地は林冠木枯死率が増加傾向にあるマレーシア・Pasoh森林保護区とインドネシア・Padang近郊のガド山域である。本発表ではPasoh森林保護区内50ha-Plotでの健全度評価データから、林冠木の枯死率を予測するプロセスを紹介する。対象木は2005年の毎木調査時に直径30cm以上の全樹木(3473個体)である。健全度項目は枝枯れの程度、樹体に対する葉量、主幹折れの有無、樹皮剥れの程度、ツルの本数、着生生物の程度、シロアリの程度、樹冠突出の程度、下層植生の程度、ギャップ隣接の10項目を目視によりそれぞれ2~5段階で評価した。フタバガキ科(870個体)の解析結果を下記に示す。枝枯れと葉量の5段階評価と直径成長速度(2005~2008年)には低い相関があった。他8項目の複数段階あった評価を2段階にまとめた結果、主幹折れや樹皮剥れ、ツル本数、着生、シロアリ、樹冠突出の項目で成長速度の平均値に有意差(<0.05)があった。健全度項目から成長速度を求める回帰式(GLM-正規)をstepAICにより選択した。毎木データ(5回分)の成長速度と生死判定から生存確率を求める回帰式(GLM-二項)を作った。両式を用いて、2008年に観測した健全度項目から4~5年後の生存確率を個体レベルで推定し、50ha-Plotの枯死率(1.84%)を予測した。L関数による解析から、生存木と枯死木は排他的分布であり、健全度評価から求めた生存確率の高い個体(>95%)と枯死木とは、さらに排他的分布であった。枯死によるギャップ効果が周辺の林冠木の不健全に繋がっていることが推測された。本研究で作成した健全度評価法は簡易かつ林分動態の定量的評価が可能な方法で、大面積調査に有効である。