| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-177
森林を構成する樹木の生態系機能の一つとして、野生鳥獣にとっての食物資源の供給機能の定量評価を試みた。茨城県北部の落葉広葉樹林帯の森林景観を構成する落葉広葉樹二次林、スギ人工林のそれぞれについて、伐採(植栽)後の林齢の異なる林分の樹木種組成、樹木サイズ構成を調査し、堅果、乾果あるいは液果を生産する樹木種ごとの繁殖開始サイズ、樹木サイズと繁殖量のアロメトリ関係などをもとに、カロリーベーズでの食物資源量を定量評価した。
広葉樹林では、林齢の変化にともなう果実生産可能な樹木種数および資源量の変化パターンが果実タイプによって異なり、果実資源供給に貢献する果実タイプが入れ替わることが明らかになった。液果類は林齢とともに種数・資源量が増加するが60-80年生程度の中齢林でピークを迎え、100年生以上の老齢林で資源量が低下した。乾果類は若齢林にピークがありその後急速に減少した。堅果類は、林齢とともに増加し、ブナ・イヌブナを交えた原生的な老齢林で最も資源量が大きかった。
他方、スギ人工林では、林齢に関わりなく果実生産可能な樹木種数および果実資源量は乏しく、特に堅果類はほとんどみられなかった。一部の林分で、液果・乾果類が侵入し、資源量としてわずかに貢献した。
この地域の森林景観を構成する森林タイプのうち、野生鳥獣にとっての食物資源供給機能から見て、落葉広葉樹林が重要なこと、若齢や中齢の広葉樹二次林が乾果や液果の供給からは重要な役割を果たしていること、ブナ属の優占する老齢原生林が堅果類の供給源として非常に重要なことが示唆された。