| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-180
河川流量の減少や河床攪乱頻度の減少等は,しばしば有機物やシルトの堆積,糸状緑藻の著しい繁茂を引き起こし,河床付着膜を餌資源,棲み場として利用する底生動物,魚類の生息及び種組成に影響を及ぼすことが指摘されている.しかし,付着膜の状態が魚類へ与える影響に関する定量的知見は限られている.そこで本研究では,アユ及びオイカワを対象に,餌としての付着膜の状態に対する選択性に着目し,検討した.
人工河川に12の実験区(幅1m×長さ3.6m,水深約24cm,流速約30cm/s)を設け,付着膜の状態が異なる礫を設置した.用いた礫(約径15cm)は,N:付着物なし,S:chl. a約 30mg/m2,細粒土砂沈積多,H:chl. a約70mg/m2,細粒土砂沈積なし,Homoeothrix Janthina優占の3タイプである.ケース1,2ではN及びS,ケース3ではS及びHをそれぞれ6区ずつ敷設し,ケース1はオイカワ,ケース2,3はオイカワ+アユを放流し,それらの分布及び摂食行動等を記録した.
オイカワの摂食行動がみられた実験区数は,ケース1では,S区がN区を有意に上回ったが,アユが混在するケース2,3では,いずれも有意差は認められなかった.アユに関しては,ケース2のS区,N区間に有意差は認められなかったが,ケース3ではH区がS区を有意に上回った.オイカワはアユがいない場合,藻類現存量が多い付着膜を選好すること,アユは,細粒土砂が多く沈積した付着膜より,沈積がなく,H.Janthina優占の藻類量が多い付着膜を選好すること等が明らかになり,付着膜の状態はそれらの分布に影響を及ぼしていることが示唆された.