| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-189
人間と自然との共生は、来るべき持続可能な社会の実現に向けてなすべき課題の一つである。過剰利用や管理不足から生態系の回復不能な劣化を避けるために、自然の利用について評価が必要である。生態系からの財やサービス(生態系サービス)について、その種類の検討や定量評価がミレニアム・エコシステム・アセスメント以降に多くの研究がなされている。しかし、生産された生態系サービスが、どこへ移流してどこで消費されているか、という地理的ネットワークの解明はあまり進んでいないと言える。本研究ではその試みとして、河川流域圏スケールにおける森林生態系サービスの生産と消費のネットワークを定量的に分析した。
森林生態系の物質循環をシミュレーション可能なBGC-ESを用いて、矢作川流域における森林生態系サービスの生産を過去(数十年前)から現在に渡ってシミュレーションした。この際に必要となる環境情報は伊勢湾流域圏プロジェクトで整備されたデータを利用した。生態系サービスすべてを推定することは難しいので、水源涵養(流出量)、炭素蓄積、木材生産に限定した。これらのサービスの消費量については各種統計資料から、サブ流域ごとに推定した。
その結果、水源涵養と炭素蓄積については、流域内で非常に大きく森林生態系に依存していることが明らかにされ、かつ管理された森林ほどこれらのサービス生産が大きいことが推定された。木材生産については過度に流域外のサービスに依存しており、余剰気味の流域内の木材生産サービスポテンシャルを利用する必要性が示唆された。