| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-195

グリーンタイド出現以降、谷津干潟で何が起きているのか?

*矢部徹,石井裕一,玉置雅紀,林誠二,野原精一,中嶋信美(国環研),中村雅子(鳥取大院・連合農),立本英機(千葉大)

日本におけるアオサ属海藻による異常増殖は内湾、特に巨大都市に隣接するような場所で報告されてきており、このうち浮遊アオサ類による異常増殖は汽水域や干潟において報告されてきた。Fletcher (1996)により提案されたグリーンタイド(緑潮)という呼称は、大野(1999)によって、アオサ属からなる異常増殖と堆積、に限定的に用いられることが提案されている。

東京内湾に位置し、ラムサール条約登録湿地として知られる谷津干潟でも、近年このグリーンタイド現象が報告されている。これまでに著者らは谷津干潟におけるグリーンタイドについていくつかの報告を行った (石井ら 2000; 2001, Yabe et al. 2009)。その結果、(1)谷津干潟では1995年に初めてグリーンタイドが確認され、それは浮遊するアオサ属数種によって形成されている。(2)1995年以降グリーンタイドの占有面積は増加を続け、2002年5月には干潟面積約40haに対して27.1haに達した。(3) 1999年1月にグリーンタイドが冬季に干潟から消失せず残存したことが初めて確認され、2002年1月には17.5haに達した。

グリーンタイドは海産物の収量を低下させ、その分解産物と臭気は人々を水辺の利用から遠ざけて沿岸域の生態系機能および生態系サービスに大きな影響を及ぼすといわれている。本発表では、谷津干潟におけるグリーンタイド発生前後にみられた当地の気象要因、干潟を取り巻く人為的要因、水質や底質に見られた変化、谷津干潟に生息する、あるいは干潟を利用するアオサ類以外の生物に見られた変化、について紹介し、それらとグリーンタイドとの因果関係について論じる。


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