| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-211
乾田化によって急速に減少した湿生植物種を保全するために、休耕田を湿地化する試みを行ってきた。本研究では、異なる管理体制下(土壌攪乱の有無・湛水期間の違い)の休耕田湿地において、表層土壌の播きだしによって出現した埋土種子由来の植物相と、実際に成立した植生との類似性を解析し、効果的な湿生植物種の保全方法について議論する。
新潟市内3 か所の休耕田において、2007年と2008年に半面を耕起し、水位管理を行い (横戸:一時的湛水、丸潟:断続的湛水、大原:常時湛水)、植物の出現を促した。各調査地において、2008年4月に表層(0-3 cm)から計100 個の土壌サンプルを採取した。各サンプルは水位0 cmと5 cmに管理されたポットに播きだし、出現した植物の種名と個体数を記録した。一方、休耕田湿地の植生は2008年に1m×1mの植生調査枠を各調査地の耕起区と不耕起区に40か所以上設け、出現した植物の種名を記録した。
播きだし実験によって、埋土種子から67 種の植物が出現した(以下、種子)。一方、植生調査では42 種が出現した(以下、植生)。種の類似度を種子と植生で比べると、湿生種が中生種に比べて高く、休耕田湿地の湛水期間が短いほど植生での出現種数が増加し、種子と植生との類似度が増加した。
各サイトに出現した植物の種組成を種子と植生で比較すると、横戸では種子に豊富な種は植生でも多かった。丸潟の耕起区は同様であったが、不耕起区は種子の頻度ほど植生がみられず、耕起が植物の出現を促していることが示唆された。
これらのことから、休耕田を植物の多様性が高い湿地に誘導するためには適切な水位管理と耕起による土壌撹乱が必要であることが示唆された。