| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-214

栃木県におけるシカの分布と狩猟者の意識・行動・努力量から見た個体数管理対策の検討

*戸田春那(農工大・院),梶光一(農工大),丸山哲也(栃木県),谷澤(栃木県猟友会)

全国的に、ニホンジカが増加し分布域を拡大させている一方で、その個体数管理を担っている狩猟者は減少・高齢化の一途をたどっている。栃木県では、1996年からシカ保護管理計画を策定し、狩猟規制の緩和などを通じて狩猟を促進することで、捕獲数を増加させてきた。しかし、現在のシカ推定密度が5頭/km2以上である地域もあり、計画の目標密度(1頭/km2)はまだ達成できておらず、狩猟者の減少・高齢化も深刻である。このような状況の中で、狩猟を通じた個体数管理を行なっていくためには、狩猟努力量を効率的に配置する必要があり(自然環境研究センター,2001)、密度の高い所を中心に捕獲を行う方が、個体数や被害の減少に効果的である(坂田ら,2002)。

そこで、本研究では、栃木県全域におけるシカの生息密度の分布状況を把握し、それに沿った形の努力量配置の可能性について、狩猟者の意識・行動の面から検討を行なった。

シカの密度分布の把握には、出猟記録のデータ(5kmメッシュごとの目撃数・努力量)と併せて積雪や植生などの環境条件、座標値のデータを用い、負の二項分布回帰モデルを構築した。狩猟者の意識・行動については、栃木県でシカ猟を行っている全ての狩猟者を対象にアンケート調査を実施し、比例オッズモデルを用いて分析を行なった。

その結果、狩猟者に対し生息に関する情報を提供することや、生息密度の高い保護区を開放することによって、シカの生息密度に沿った努力量配置が可能であること、そして、これらの対策は個体数調整と併せて実施した方が、捕獲の数と分布の面で効果的であることなどが示唆された。また、被害対策目的のワナ猟師よりも、自然の保護管理の担い手としての意識を持ち、狩猟を楽しみで行っている狩猟者の方が、これらの対策への貢献が期待された。


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