| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-216

銅に対するサクラミミズ(Eisenia japonica)の感受性―野外土壌とOECD人工土壌との比較―

*藤井芳一,野崎真奈,岡田浩明(農環研),金子信博(横浜国大)

化学物質の生態影響は,規定された種を用いた室内毒性試験の結果を基に評価される.しかし,日本において土壌生物を用いた試験例はごくわずかであり,なかでも土壌生態系機能の維持において重要な役割を果たしている土壌動物の実施例は皆無に等しい.OECDやISOによって提案されている国際的な標準試験法(以下,標準法)での採用種や,欧米での試験対象種は,日本の普通種とは異なるため,試験結果を日本の土壌にそのまま適用することはできない.そこで,日本の普通種を用いた毒性試験のデータ収集が必要と考え,先述の標準法の対象種であるシマミミズ(Eisenia fetida)と同属で日本の普通種であるサクラミミズ(Eisenia japonica)を用いて毒性試験を実施した.標準法では比較的多量の土壌を使用し,試験後には多量の汚染土壌を廃棄することになる.そこで,50ml遠心管を用いた小さな系でのサクラミミズの飼育法を開発し,毒性試験を実施した.標準法で用いるOECD人工土壌と共に,野外の土壌として渡良瀬遊水地の非汚染土壌を試験に用いることによって,標準法の野外土壌への適用可能性を検討した.銅に対する半数致死濃度(28日間試験)は,渡良瀬土壌において329.36 mg Cu/kg,OECD人工土壌において211.50 mg Cu/kgであった.このことから,標準法は野外土壌における毒性を過大評価する可能性が示唆された.また,OECD人工土壌の,シマミミズの半数致死濃度は1002 mg Cu/kgとする報告があり,サクラミミズの感受性が高かった.種によって毒性値は大きく異なるため,生態影響の評価には,現地の種組成に基づいた毒性値の採用,毒性試験の実施が必要である.


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