| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-227

侵入地および原産地におけるセイヨウミヤコグサの遺伝的および形質的分化

三村真紀子(九大・理),原登志彦(北大・低温研),五箇公一(国環研)

自生地から別の土地に導入された植物種は、気温、日長、競合種など、少なからず新しい環境や環境要因の組み合わせにさらされている。他殖性、とくに自家不和合性の植物種では、繁殖に別個体を必要するために、栄養繁殖する種や自殖する種と比べて、比較的侵入性は低いと考えられる。しかし、他殖性の植物種が侵入種となる場合も多く、これらの種が新しい導入地でいかに有効集団サイズを回復し、分布を幅広い環境に拡大しているのか明らかになっていない。本研究では、ミヤコグサ属を用いて、自生地における適応分化と導入地における個体群回復と分布拡大のメカニズムを解明することを目的とした。ヨーロッパ原産で自家不和合性の高い外来種セイヨウミヤコグサ(Lotus coniculatus)を題材とし、1)自生地および導入地における遺伝的構造から侵入源を特定し、2)自殖性を示す在来ミヤコグサとの遺伝的多様性を比較し、3)同一環境下における栽培実験から自生地と導入地における形質的分化を解析した。遺伝解析によると、日本に侵入するセイヨウミヤコグサは、在来のミヤコグサと比べて同等もしくは同等以上の多様性を維持していた。少なくとも複数のソースから導入されたと考えられ、ヨーロッパ自生系統および栽培育種系統の両方から導入されていることも明らかとなった。また、形質解析では、日本の侵入集団と栽培育種系統は、原産地の個体より葉面積が広く、地上部の比率が高い傾向があり、総バイオマスが高かった。侵入集団は、複数の系統が同所的に導入されることで多様性を回復し、さらに、導入された栽培系統などの形質を獲得することで、侵入地で高い生長率を示していると考えられる。本大会では、採集地の地理的条件を交えた解析結果も紹介する予定である。


日本生態学会