| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-232

ニセアカシア種子の埋土期間と発芽能力

*山田健四,真坂一彦(北海道林試)

北米原産の外来種であるニセアカシアは,荒廃地緑化や街路樹,蜜源などに広く利用されている一方で,旺盛な繁殖力から,侵略的外来種として位置づけられている。

ニセアカシアは,伐根や水平根から旺盛に発生する萌芽枝による栄養繁殖と,大量に結実して硬実種子として長期間休眠する種子繁殖の二通りの繁殖様式を持つ。ニセアカシア種子の発芽生態については,近年になって,散布直後に発芽する非休眠種子の存在が再認識され,休眠種子についても母樹によって休眠特性が異なることが明らかになるなど,強い攪乱がないと発芽しない硬実種子,というステレオタイプの視点では捉えきれない複雑な特性を有することが認識されつつある。林床に供給されたニセアカシア種子の発芽生態を把握することは,外来種を管理する上で重要である。本研究では,ニセアカシア種子が林内で埋土した場合にどのような休眠・発芽特性を示すのか,4年間にわたって調査した結果について報告する。

北海道空知地方の2箇所の母樹から2005年11月に種子を採取し,シードバックを用いて針葉樹林と広葉樹林の2林分のリター層下に埋設した。これらの種子を2006年から2009年の春に掘り出し,ろ紙を敷いたシャーレ内で25℃,暗条件下で300日以上の発芽試験を行った。毎年春の掘り出し時の生残率は母樹によって異なり,母樹Iでは年々低下したが,母樹Bではほとんど低下しなかった。発芽曲線においても母樹による違いが見られ,母樹Iでは150日以上もだらだらと発芽し,最終的には9割前後が発芽したが,母樹Bではほとんど発芽しなかった。発芽試験後の未発芽種子に傷つけ処理を行ったところ,ほとんどの種子が発芽した。これらの結果から,ニセアカシアは長期埋土種子と,数年間で発芽する短期埋土種子の2種類の埋土種子を作ることにより,様々な攪乱規模に対応して発芽・定着を図ることができると示唆された。


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