| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-233
陸産貝類(陸貝類)はこの500年で最も絶滅した種数の多い生物である。特に、島嶼部に固有の陸貝類の多くは、絶滅したか絶滅の危機に瀕している。減少の要因として、捕食性の外来種による影響が近年注目されている。中でもヤマヒタチオビ(Euglandina rosea)、ニューギニアヤリガタリクウズムシ(Platydemus manokwari)、クマネズミ類(Rattus spp.)による影響が強いと考えられる。在来生物相に影響を及ぼす外来種の多面性を明らかにするために、上記の捕食者間で(1)人為分布域、(2)移入時期・方法、(3)食性幅、(4)他生物との相互作用を比較した。ヤマヒタチオビは1955年以来、(外来種で害虫の)アフリカマイマイを防除するために多くの地域に導入されてきた。ニューギニアヤリガタリクウズムシは1970年代以降、ヤマヒタチオビと同様に生物防除目的で導入されてきたが、意図せずに持ち込まれた地域も多い。クマネズミ類は数百年前から、人の移動にともない分布域を広げてきた。また捕食者間で食性幅は異なり、ヤマヒタチオビは陸貝類のみを、ニューギニアヤリガタリクウズムシは陸貝以外にもさまざまな土壌動物を、クマネズミ類は陸貝類以外にもさまざまな動植物を餌として利用していた。また、これらすべてが侵入している地域では捕食者間での相互作用も起こっていた。例えば、ニューギニアヤリガタリクウズムシやクマネズミ類はヤマヒタチオビを捕食することがある。また、クマネズミ類を終宿主とする広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)は、待機宿主である陸貝類を介してヤマヒタチオビやニューギニアヤリガタリクウズムシへも寄生することがある。外来種による在来生物相に及ぼす悪影響を緩和するには、特定の外来種だけではなく、他の外来種との関係や生活史も考慮することが重要だと考えられる。