| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-234

ハリケーン・カトリーナの生態的後遺症に関する研究 (I) 被災地の植生回復地域における高分解能衛星画像を用いた侵入樹種分布の推定

吉田美幸,長澤良太,竹内貴裕(鳥取大・農),Saunders Lyndsay,Kirk Burton,Reza Pezeshki(Memphis大・生物),岩永史子,*山本福壽(鳥取大・農)

2005年8月にアメリカ合衆国南部に甚大な被害をもたらしたハリケーン「カトリーナ」を研究事例として、衛星画像と航空機LiDARデータ・航空写真を用いて、広範囲に広がる森林の被害状況と回復過程を効率的に把握することを目的として解析を行った。研究対象地はアメリカ合衆国ミシシッピ州南部・ルイジアナ州南西部で、対象地域面積は12,576km2、標高は−2.5〜122mであり、南部は標高5m未満の地域が大半を占めており,ハリケーン被災時には暴風による被害だけでなく高潮や洪水によって甚大な被害を被った地域である。その結果、ハリケーン被災直前と直後のNDVIの差分を取ることで風倒や先折れによると予想される直接被害地域を推定することができた。また、被災直後3時期の衛星画像から植物活性度を表すNDVIと地表面の水分量を表すLSWIを用いることで、塩水が長時間停滞し植生に影響を与えたと予想される間接被害地域を推定することができた。さらに、森林範囲で切り取った画像で被災後2年間のNDVIの増加量を求めることで急速な植生回復地域を推定することが出来た。これらの解析手法を用いることで効率的に森林被害地域と再生状況を把握でき、森林管理や環境保全の側面的な支援に役立つと考える。さらに画像解析の結果、急速な植生回復が認められるニューオリンズ近郊では、先駆樹種である外来種であるナンキンハゼ(Sapium sebiferum L.)とセンダン(Melia azedarach L.)のハリケーン来襲後における広範な分布域拡大を確認した。


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