| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-238

外来魚と在来魚の共存とため池の環境条件の関係

*角田裕志,満尾世志人,土井真樹絵(農工大・院),大平充(明大・農),千賀裕太郎(農工大・院)

オオクチバスの侵入はため池の在来生物群集、とりわけ魚類及び甲殻類に対して深刻な影響を与えるとされ、ため池のような小規模水域では魚類相は著しく劣化することが報告されている。その一方で、一部のため池ではオオクチバスの侵入・定着後であっても豊かな魚類相が維持される場合もある。このような共存関係を可能とする要因について、水質や水生植物等のオオクチバスの捕食能力に影響する水域内の環境条件の影響が推察される。そこで、オオクチバスが侵入・定着したため池内の魚類相と環境条件の関係を明らかにすることを目的とした。2008年から2009年にかけて、岩手県南部の奥州市に存在するため池49箇所のうち、オオクチバスの定着が確認された14箇所において魚類相調査並びに環境調査(水質、物理環境、植生)を実施した。野外調査で得られた魚類相(種数、多様度指数)と環境条件及びオオクチバス優占度のデータを用いて重回帰分析を行った。その結果、魚類の種数及び多様度指数とオオクチバス優占度は強い負の相関が得られ、重回帰分析においても負の影響を及ぼす説明変数として抽出された。一方、ため池の環境条件としては、多様度指数に対して水域面積が、種数に対しては水深の変動係数並びに水生植物被覆面積割合が、それぞれ説明変数として抽出された。以上より、魚類相の豊かさ・多様性とオオクチバスの共存に関しては、水域規模と物理構造的な環境条件が影響を及ぼすことが示唆された。本報告では主にため池内の環境条件にのみ着目して分析を行ったが、今後の研究課題として系外からの在来魚個体の移入などの影響を踏まえた分析について議論したい。


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